ペルノー

 モイーズが個人レッスンの際に、親しい生徒に対し「ペルノーは好きか」とペルノーをすすめた話はしばしば耳にする。ペルノーとはいったい何?

 飲んでみました!学生時代。ペルノーはお酒です。しかも、強烈に強い。

 一般的な名前ですと、アブサンなのです。アニス酒とも言うかもしれません。スピリッツ、蒸留酒です。

 原液(生のまま)だと、薄緑色の透明な液体ですが、水で割ると乳白色に濁ります。においは、松ヤニのようなクセのあるもので、味も舌にやや甘みを感じ、妙に後味がのこるもの。おいしい飲み方がきっとあるんでしょうけど、そこまでして飲まなくてはならないものではない気がする・・・・。

 20年も前に調べたことの記憶なので、正確ではないかも知れませんが、ペルノーは昔は「にがよもぎ」の草の汁で造られていたそうで、その頃のオリジナル・ペルノーは多飲すると男性にインポテンツを引き起こしたそうで、そのあたりがデカダンの風潮とマッチし、人気があったらしい。しかし、その「効果」が問題となり、現在では違う材料に変わっているそうです。(だから、変なこと期待して飲んだりしないで下さいね!まあ、そんなこと期待してどうするんだ?って効果ですからね。バイアグラの逆ですから・・・。)

 おそらく、安くてアルコール度数が高いというわけで、日本で言えば「焼酎」みたいなものでしょう。

 こういうところが、モイーズらしい。

 気取らず、田舎風を良しとするんでしょうね。まあ、楽器もかたくなに洋銀素材にこだわっていましたし。たとえば、モイーズが銀の楽器を吹いていたとして、「モイーズさん、すばらしい音色。さすが銀のフルートですね!」「・・・・(間違ってはいない)」では、おもしろくない。「いや、わしのフルートは洋銀だよ。」この方が、なんかひとひねりあって、モイーズらしい。

 「えっ? ペルノーを飲むんですか?(何でだぁ??)」「・・・そうだよ。」

 この方がモイーズらしい。

 (マルセル・モイーズさん、ごめんなさい)

とりとめもなく、この章おわり

(1999年8月28日室長Kirio)

99.9.8.長野県白馬の、塩嶋さんからペルノーについての証言メールをいただきましたので、ご紹介。

「懐かしいお酒のことが貴ホームページに載ってたので、思い出話を一つ。

モイーズはペルノを人に飲ますのが好きで(女の子の弟子たちは、たいがい嫌ってましたが)、私も飲ませてもらいました。マールボロ音楽祭の期間中、室内楽のコーチがあったりすると、若いあんちゃんが車でモイーズ自宅に迎えに来てました。その運転手に「おめぇ、これ飲んだことあるか?」ってな調子ですすめるものだから、聞きとがめたブランシュは、とんでもない!とおこっちゃうし。仕方なくそのドライバーは、飲んだふりしてその場を繕ってました。いまではそんなことはありませんが、最近まではあの特徴ある香りの酒を飲むと、モイーズの部屋の気配がよみがえってきたものです。今回のフランス旅行でも、カフェに行って最初にたのんだのはこれでした。

サンタムールで生前のモイーズを知ってた人たちが、「モイーズはよく飲んだものですよ!」と話してくれましたが、昔屋根裏部屋を世話してくれたMatheyじいさんも、飲み仲間だったらしい。「マルセルモイーズ広場」に面したカフェは夏の間は遅くまでにぎわってます。

ペルノは、あまり上品な酒って感じじゃぁないですね。最近の酒瓶には、オレンジジュースで割ってもよし、なんて書いてありますが、それをやると、飲みすぎまっせ!ご注意。」


塩嶋さん、ありがとうございます。

(1999年9月10日 追加)


マルセル・モイーズ研究室

「私の死後にも、音楽への敬意という伝統をフルートを吹く人々に残してゆきたいものだ」 マルセル・モイーズ 20世紀最大のフルート奏者の一人とも称されるマルセル・モイーズの足跡を辿るサイトです。 (スマホの方は左上のメニューバーからお入り下さい。)