カルメン間奏曲

1928年に録音された「カルメン間奏曲」のSP盤にはモイーズの名前はクレジットされていません。このディスクは、パリ・オペラコミック座の歌手たちによる、歌劇「カルメン」の抜粋盤の中の1枚です。このセットは一度に全部録音されたわけではなく、ほとんどがエリー・コーエンの指揮によるものですが、中にはフィリップ・ゴーベールが指揮したものが含まれたりしています。(ティルが歌う「花の歌」など)オーケストラは私が持っている、間奏曲のディスクには「オペラコミック座の主席指揮者、エリー・コーエン指揮によるオーケストラ」としか書いてありません。しかし、ゴーベールが指揮した盤などには「パリ交響楽団」(Orchestre Symphonique de Paris)という名前がクレジットされています。この辺の事情から、この間奏曲はパリ交響楽団の演奏である、ということになっていったのではないかと思います。この若手を中心に結成されたオーケストラでモイーズが演奏した可能性について、息子のルイ氏は「つつしみのないオーケストラ」とからかわれていたオーケストラと父が共演することは考えにくい、という主旨の発言をされています。しかし、これはこのオーケストラがパリ交響楽団(Orchestre Symphonique de Paris)であった場合です。当時も、オーケストラとレコード会社の専属契約というのはあったはずで、何かの事情で正式名をクレジットできない場合、単に交響楽団とだけクレジットされることがあります。また、こういう場合Orchestre Symphonique(de Paris)と、パリのオーケストラであることをカッコ付きで記す場合も多いようです。たぶん、これによる勘違いだろうな~。この場合、指揮しているのがオペラコミック座の指揮者で歌手陣もオペラコミック座つきの歌手であるとすれば、このオーケストラはほぼ「オペラコミック座管弦楽団」であると考えるのが妥当です。おそらく、前記の事情で正式名はオフレコだったのでしょう。

 だとすれば、話は簡単です。モイーズはこのオペラコミック座のフルート奏者だったのですから!実は、この演奏はどう考えてもモイーズ以外の笛吹きとは思えない名演奏なのです。でも、こうやって確実性を高めて聞けば、よりモイーズのすばらしさを安心して確かめられるでしょう?どうぞこちらでお確かめ下さい!

(1999年2月19日室長Kirio)

マルセル・モイーズ研究室

「私の死後にも、音楽への敬意という伝統をフルートを吹く人々に残してゆきたいものだ」 マルセル・モイーズ 20世紀最大のフルート奏者の一人とも称されるマルセル・モイーズの足跡を辿るサイトです。 (スマホの方は左上のメニューバーからお入り下さい。)