イベールのフルート協奏曲の復刻

 イベールのフルート協奏曲はモイーズに捧げられ、1934年にゴーベールの指揮で初演されました。全盛期のモイーズは、モーツァルトのニ長調の協奏曲と共に、この協奏曲をしばしばコンサートで取り上げたそうです。レコーディングは、初演の翌々年、フランス・グラモフォンにウジェーヌ・ビゴーの指揮で行われました。(MT.No.2LA738-1,739-1,740-1,741-1)

 ではこの録音の復刻はというと、CD紹介の部屋でも申しましたが村松、東芝EMI共に第1楽章しか収録されていません。村松の吉田雅夫さんの解説では「(モイーズ)先生自身の希望で第1楽章しかCDに出来ないのは、本当に残念」とあります。ああ、この復刻版がLPで発売になった頃はモイーズはまだお元気でしたから、収録に当たってお伺いでも立てたんでしょうね。ご丁寧なお仕事とは思いますが、じゃあなぜSP盤は発売になったのか?という疑問を持ちませんか?モイーズほどの方でしたら演奏に大問題があればSP盤の時点で発売を認めなかったと思いますね。晩年になって、「あれはイマイチだったな」と思われることはあったのかもしれませんが、復刻を差し止めることは出来ないはずです。せっかくのチャンスを逃した気がします。こういう企画はそうそうやり直せませんからね。

 では東芝はというと、解説は藁科雅美さんですが、「残念なことに、モイーズは第1楽章しかレコードに入れなかった。理由は明らかではないが、SP時代のレコード演奏時間の制約のため(中略)省略されたもの」などと書いていらっしゃいます。これは間違いです。こういう偉い先生が書くと、皆さん本気にしちゃいますから困ります。でもなぜ東芝EMIまで村松方式に歩調を合わせたのでしょう?ひょっとして吉田雅夫さんにでもアドヴァイスを受けていたんでしょうかねえ。残念無念です。そして、どうしてこうもモイーズに関するデータはえ~かげんなものが多いのでしょう。

 演奏は2、3楽章も特に問題はないですよ。いい演奏です。

 東芝EMIさん!私の原盤を提供しますから、もう一度モイーズの協奏曲集CD2枚組でも出しませんか?モーツァルト3曲、イベールだけじゃもったいないから、チマローザを加えましょうよ!(あ!チマローザは原盤持っていないよ!)

(1999年2月3日室長Kirio)

 ↓こちらで全楽章聴くことができます!

マルセル・モイーズ研究室

「私の死後にも、音楽への敬意という伝統をフルートを吹く人々に残してゆきたいものだ」 マルセル・モイーズ 20世紀最大のフルート奏者の一人とも称されるマルセル・モイーズの足跡を辿るサイトです。 (スマホの方は左上のメニューバーからお入り下さい。)